[技術者倫理のお話]
皆さんこんばんは。技術士のススメ管理人です。今日の私の話は三部構成になります。
最初に「はじめに」ということで、ごくごく当たり前の倫理観についてお話しします。
次に「技術士に求められる倫理観」ということをお話しします。
最後に「私が経験したケース」をお話しします。
はじめに
当たり前の倫理観というところですね。
ここ数年いろんなメーカーの不祥事のニュースを聞くことがあります。長年の検査不正が明るみに!みたいな話です。
こういう話が出ると技術者の中にもですね、こんなこと言う人がいるんですよ。
「今まで市場で問題になってないんだろ?安全上のトラブルとかないんだろ?だったらいいじゃないか」
「だいたい品質とか検査とか必要以上にやりすぎなんだよ。ムダだよムダ。そんなにやらなくていいんだよ!」
残念ながら技術士の中にもこういった発言をする方、います。
ただ気持ちはわからなくもない。製造業の現場というのは品質向上!コストダウン!納期厳守!技術者たちはずっと言われ続けている。ずっと。いつから?
私が新人だった頃、20年ほど前、すでに現場は、乾いた布を絞る状態だと言われていた。
20年以上ずっとそんな状態でさらには近年の人手不足。となるとこんなのムダだよ!と言いたくなる気持ちもわかる。
だけどそれをやっても無駄かどうかということと、やらなくていいということとは別の話ですよね
品質はここまでやります。検査はこれをやります。こういう約束で受注しているわけですよね。
それを品質が未達なのをデータ改ざんするとか、必要な検査をやっていないのに「どうせ合格するだろう」と高を括ってデータを捏造するとか。
技術者以前に人としてダメなやつです。
本当にその品質や検査がオーバースペック、やりすぎ、無駄だと言うのであれば契約の時点でそれを説明してお客さんから了承得ないとダメですよね。
それとこういう不正をやっちゃうとこんな弊害もあるんですよ。
BtoBの場合、多くの発注者は相見積もりを取ると思います。
A社はちゃんと真面目に品質を保証する。そうすると不良が出てくると作り直しが必要になる。
定められた検査もちゃんと行う。そうすると工数がかかる。
B社はちょっとくらい品質が悪くてもデータを誤魔化して良品にしちゃうことが常態化している。そうすると、見かけ上は不良があまり出ない。この会社。
検査もサボって書類だけ整えるのが当たり前になってしまっている。検査の工数がかからない。
同じ製品を見積もったときにどちらが安くなりますか?明らかにBですよね。
しかもB社は見かけ上は不良が出ないからデータとして工程能力指数がとてもいい。A社不良が出るから工程能力指数がとても悪い。
そうするとB社の方が安くて高品質に見えてしまう。
さらに仮にこのB社が大企業。A社が中小企業だったらどうでしょうか。発注者は「さすがB社さん!安くて高品質!素晴らしいですね。」と。
A社を選ぶ理由なんてないですよね。
本質的に安かろう悪かろうというものが残るんですね。
悪貨は良貨を駆逐するってやつです。
嘘をつく、だます、都合の悪いことは隠す。
やっちゃダメなんですよ。人として
これ、今はメーカー側、受注者側の話をしましたけど発注者側も同じですからね。
発注者側も嘘をつく、だます、都合の悪いことは隠す。当然やっちゃダメですからね。
私は発注者側で仕事していたこともありますが、あるとき仕様書を作りこんでいたら、上司から仕様書なんてそんなに細かく書いたらダメだよ。と言われたんですよ。
細かく書いてしまうとそこに書いてないことを業者にやらせられないだろ、と。曖昧にしておくんだよ、と。
あるいは「今回のこれは開発機でうまくいけば海外展開して100台くらい出るからそれを考慮しろと言って、安くさせるんだよ。これが交渉術だ」とか。
その話が本当ならまずは確約しろという話なんですよね。
数出るから安くしろっていうのは実際に数が確定したときにいう話で、その確定している話で約束する。
確定していないのに言うのは嘘っぱちです。
あまりこういうことを言うとある種の人から嫌われるんですけどね。
発注者側だろうが受注者側だろうが
嘘をつく、だます、都合の悪いことは隠す。
そんなことしていいわけないじゃないですか。
技術者とかではなくて、人として当たり前の話です。
子どもの頃に言われましたよね。嘘をつくな。正直に言いなさい。
人として当たり前の話です。
では次に技術者の中でも技術士に求められる倫理についてです。
一応、これはあくまで私の解釈です。ちなみにご存じない方のために、技術士というのは文科省管轄の国家資格です。
技術士会のホームページに技術士倫理綱領というのが載っています。それを読みあげるのもいいのですが、それよりも技術士会の中に倫理委員会というものがありまして、そこがweb公開している最近の技術者倫理事例がわかりやすいのでそちら紹介します。
いくつか事例が出ているのですが一つ、検査データ改ざんについて、多少はしょった形で紹介します。ケーススタディです。
あなたの立場はBさんです。
BさんはAさんからある仕事を引き継ぎました。Bさんはあるとき製品の検査データがわずかに基準を満たしていないことを確認しました。この程度であればちょっと修理したら大丈夫だということを上司に報告。上司はこの程度なら本来の目的から考えて問題ない。前にAさんがやっていたように修理とか再試験などはやらずに、工数掛けずに済ましてほしい。とのことだった。要するに上司は遠回しに不合格だけど合格にしろと言っている。Bさんは納期も厳しいことから指示通り検査結果を書き換えた。
その後、他社のニュースでデータ改ざんに関するものを見かけて、Bさんは自分がやったことも組織ぐるみの改ざんだと気づいた。
Bさんあなたはどう対応しますか?
という事例、ケーススタディですね。
改ざんをやっていいかどうか?と質問するとみんなダメだと言いますよね。当たり前です。
でもやっちゃダメが当たり前だからといって現実に起きないか。というとそうではない。
現実問題として起こってしまうこともある。
起こってしまったときにどう行動するか。例えば今回のケースは自分が関与してしまったという事例ですが、部長や課長として部下からそういう報告受けた、などのパターンもあると思います。
実際に起きてしまったときにあなたはどう行動するか?ここが技術士としての倫理観が問われるところだう。と私は思います。
改ざんって悪いの?場合によっては必要悪ってこともあるんじゃ無いの?
じゃあないんですよ!
嘘ついたらダメ。当たり前。さっき言った通り、これは技術者云々以前に人としてです。
ここから一歩踏み込んで現実には起きてしまうことがある。そのときに君たちはどう行動するか?これが大事なんですよ。
まぁここまでの話、多くの人がそうだね。と共感してくれると思います。
じゃあ、お前はどうすんの?って話ですよね。お前というのは、私です。それがないとただの投げっぱなし、ただの指摘なんて誰でも言えるわけで、ここで終わったらただの評論家です。私は評論家ではなく技術士です。
私だったらどうするか。シンプルに。
「上司に不正の事実を報告します。」
何も難しいことはない。シンプルでしょ。
「上司に不正の事実を報告する。」
不正というのは、組織運営が正常であれば起こらない事象です。異常事態と言っていい。
私は産業用機械を設計する人なので産業用機械に例えると、通常運転中に機械で異常が起こったら機械を止めたうえで、然るべき人に直してもらう必要がある。その異常が通常運転をしている中で自然と治るなんてことほぼあり得ない。
絶対ないとは言わないです。ぶっちゃけ、動かしている間によくわからないけれど不具合起きなくなるとかも経験ありますから。
まぁでもそれと一緒です。不正というのは組織運営で起きた異常事態。然るべき人に対処してもらう必要がある。もし仮に課長に言って動いてくれなかった。むしろ罵倒される可能性もありますよね。そうやって変わらなかったらそれは課という組織単位では対処できない異常ということ。
そのときは部長にいう。それもダメなときは部という組織単位では対処できない異常ということ。そうやって上に上にあげていく。
最終的にどうしようもない場合は会社に言う。総務とか人事とか。いわゆるスタッフ部門ですね。
で、会社に言ってもダメならそこで初めて外部に言うしかなくなりますよね。
例えば年に一度、従業員満足度アンケートみたいなのを総務人事がやってたりする会社もあると思います。
私は昔ですが社内のある不正行為に対して、私が当事者になってしまったので課長や部長に言った。でもダメで、上にあげていって部署の担当役員まで言っても変わらなかったので、人事がやっていたこの手のアンケートでまぁ個人が特定されてもいいやということで「不正行為をやっています。」と書いたことがあります。
そのあとすぐ是正されました。
そうやってまずは上司に言う。上司がダメならその上。それもダメなら会社。
一方で技術士なら、できることであれば自らの専門分野に基づいた改善案を提案する。
データの改ざんということに対して、私だったら例えば、モーターの回転数をカウントするのにロータリーエンコーダーというものを自作したことがあって、要するに計測器を使って人が測定するのではなく自動で計測・記録する仕組みを作って人が改ざんする余地を排除する。ということが私の専門分野での改善案として考えられるわけです。
問題を指摘してそこで終わりではなく、問題解決のための課題を抽出して解決に導く。
倫理観というか技術士に求められる資質そのものですね。
と言う事です。
というわけで、不正はダメだ!ではなく現実問題として発生してしまったときにどのように対処するのか?
これは「改善するために行動する。」ということであり、ここが技術士の倫理として大事なところだと思います。
シンプルに言うと悪いことは改善するように行動する。
ある製品の、
品質が悪い、コストがかかるこれは悪いことだ、作るのに時間がかかるこれも悪いことだ、不正が働かれているこれも悪いことだ。
悪いこと=問題点、これを指摘する。指摘するということは組織に認識してもらい改善に向かむよう働きかけることです。飲み屋で一杯飲みながらあれはダメだこれはだめだ、だからうちはダメだめなんだ!とグダを巻くのは、これは指摘ではない。
組織に認識してもらうよう働きかけて、改善に向かうための策を自分の専門分野から提案していく。
そして改善に導く。実際に組織がどう動くかはまた別の話ですけどね。
これが国家資格である技術士に求められていることだと、私は解釈しています。
というところで、ちょっと倫理から離れて話が膨れてしまいますが、前回のスペース、副業をテーマにしたときにお話ししたのですが、私は製造業全体にはある問題があると考えていて、それを指摘するのではなく、自分なりに何をすれば解決できるか、個人で出来ることはなにか?と考えたうえで今のこのスペースのような活動を行っています。
製造業が抱える問題解決のために実際に行動をしている、ということです。自分なりにですけどね。
話を倫理の話に戻します。最後に私が経験したケースをお話しします。
はっきり言って先ほどのケーススタディ、データ改ざんの話なんて簡単すぎる問題です。
なぜか。
不正は悪いこと。白黒はっきりしているからです。
悪いことだと誰でもわかる。技術士だったらその悪いことを改善するように行動する。どのように行動しますか?という分かりやすい問題です。
現実に起こる問題はもっと複雑なケースがある。
ここからの話の詳細は過去にスペースで話した内容です。過去にスペースで話した内容はそのほとんどを文字起こししてブログにアップしています。技術士のススメのHPにその一覧があります。
そこにテーマトーク2泣いた話 春山、というのがあるのですが、詳しくはそちらを見てください。これは該当ページからYouTubeの音声アーカイブが聞けます。また副業の話も文字起こししてアップしてありますしこの話も音声を聞くことができます。HPは私のTwitterプロフィールにリンクが張ってありますが、この後ハッシュタグ技術士のススメをつけてリンクツイートしますのでそちらもご確認ください。
ざっくりどんなことがあったのか説明すると、機械の解体工事。定修期間10日間での工事です。8日目にしてトラブルが発生しました。その対処にほぼ丸一日かかり、9日目を終えた時点で1日分の工程が遅れていた。
10日目、最終日を迎えて。このままでは間に合わない。
というところで対策は2つある。
1つはお客さんに「遅れます。1日ください。」と頭を下げる。
だけど、これを言うと「1日遅れたらその分、生産が遅れる。その分の保証はどうするんだ?」とほぼ必ず言われます。
だから簡単に工期を伸ばしてくれとは言えない。
もう1つの対策は、職人さんたちに最終日、やりじまいで残業をしてもらう。
ただし、ここまでの9日間も決して毎日定時上がりではなく、残業続き。何100トンという機械の解体は緊張度も高く、トラブルも乗り越えて心身ともに疲労のピークという状態。
丸一日分の業務量を残業してもらうということはその日、かなり遅くまでの残業になる。
ここに来るまでにヒヤリハットも何度か発生している。
そんな状態で残業をお願いする。
ちなみに増員すれば何とかなるとかそういう単純なものでもない。
36協定がくまれていて、その範囲内での残業であれば違法ではない。
工程が遅れてしまったので工期を伸ばしてください。と正直に言うのも違法ではない。
どちらを選択しますか?
どちらも悪いことではない。法律を違反しているわけではない。そういう意味でどちらも悪いことではない。白黒はっきりしていない。
データを改ざんするとか捏造するとか、これは契約違反ですからね。悪いことだからやっちゃだめだとかあいまいな言い方していましたけど、立派な違法行為ですからね。
一方で納期が遅れますと正直に言うか、職人さんたちに残業してもらうか。これはどちらも違法ではない。その2者択一。
現実にはここういったややこしい問題が出てくる。
ひょっとしたらリスナーの方、この問題を倫理の問題と思わないかもしれません。問答無用で工期が遅れるのは悪いことだという方もいるかもしれません。
私がなぜ、この問題を倫理の話題で取り上げたか?
そしてこの問題に対して私がどのような選択をしたのか?
これは長くなるので先ほど紹介したブログ記事をご確認ください。
このあとハッシュタグ技術士のススメをつけてブログのリンクをツイートしますのでそちらからご覧ください。
以上です。
ハットリさん
口頭試験をから受験される方もいると思うんですが、不正を上司に伝えて対応していくという話があったんですけど、基本的には公益通報者保護法に則って対応するとかそんな話題よく出てきますよね。
あれって、そこまで行くと思った事ってありますか?
春山
私自身がということですね。
話の途中であったようにそのアンケートで違法行為してますよって書いたことあって
それはもう、
ハットリさん
誰に出したんでしたっけそれを?
管理人
最初は課長に言って部長に言って担当役員に言ってダメだったから最終的に総務とかがやってるアンケートに書いたってとこですね。
ハットリさん
そういうことですね。それは会社内ということですよね。
管理人
ですね。会社内ってことです。ダメだったらもう外に行くしかないなと思いましたし、逆に言うとそうやってステップ踏んだ上じゃないと、いきなり外に出してもいいもんでもないと思いますけどね。
いきなり外に出すっていうのはすごく悪手だと思いますね。
ハットリさん
なんかその外に出すっていうのも本当に通報って言うとね、言葉が悪いんだけど外に言うことで逆に協力を得られたりだとか、改善すべきところに気づいたりとかねなんかそんな風に使えればいいかなと思ってたんですけど。
管理人
私がやっぱりそのやっぱり内々で済ませられるところは内々で済ませればいいんじゃないのって思う。それは多分外の人からすればそれ会社の中で片付けられないの?って最初に ファーストステップとして思うところあると思うんですよねいきなり重たいボールをポーンって投げられても。
そのステップは結構ね、私は結構いろんな人に勘違いされるんですけど、組織の中にいるときは組織のステップをちゃんと踏む人なんですよね。
ハットリさん
私はわかっているよ笑
管理人
わかっていただけてると思うんですけど笑
意外と細かいことをちゃんとやるやつだなって思ってくれてると思うんですけど、そういうところをしっかりと一歩一歩、一段ずつ一足飛びにせず。
1段ずつ上がっていくっていうのが遠回しなようで一番近道だし、確実だし、一番、そのなんて言うんですかね。
表現が難しいけど、恨みを買わないみたいなところですかなと思うんですね。
ハットリさん
よく倫理のいろんな事例集があってそういう対応が大事だっていうのを本当にその
通りだと思うんですけど事例の中であの シティコープビルの事例って聞かれたことがある方もいるかもしれない。
ちょっとぜひ今から受験される方ぜひそれ、なんか本だとかネットでよく出てくるんでシティコープビルの話 読んでくださいめちゃくちゃいい対応です。
最高な対応だと思いますね。
正座して読んでみてくださいというのを言いたかっただけです。
はい、私はいいですダイさんなんかご質問ありますか?
ダイさん
ありがとうございます。これっていわゆる今日の話って正当かなと思っててやっぱさっき言ってた組織が異常だと結構麻痺してるんで、このデータ大したことないよね、とかまあなんか補正係数使えばいいよねとか一時的になんとか間に合うようになるよね、とか役員にもなんか品質的にはなんかなんとかなりそうですってなんかそういうような話かなと思ってあんまりこう事例というか経験っていう観点でちょっと言いにくいですけど、多分こういう話ってあるのかなっていうのをちょっと改めて感じました。
前職ではなんか似たようなことあったかなと思ってじゃあ私それについてじゃあ自分できるのかなって、何ができるのかなと思って今自身がやっているのはよく部下から報告を受けるとき可能な限りグラフとか資料でまとめてくれる人が多いんですけど、可能な限り生データ欲しいって言ってるんですね。
そもそも改ざんもそうなんだけど、そもそも技術として成り立ってるかとかそして会社に残せるかっていういわゆるもっと本質的なところ。その先に改ざんという話とか補正係数とかかけてなんか変なことしてないかとか。そういうことを意識してるのでちょっと私が できる行動としては本当に現地現物じゃないですけどそういうことができれば少なくともいいかなと。
私が先ほどお話ししたような行動でそれをちゃんと出せるよねと。生データも改ざんされちゃうともうちょっと困っちゃうんですよ。
管理人
そうですね笑
どうしようもなくなっちゃいますからね。
以上
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